episode.1 だからこそ

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とりあえず目を閉じてみる。 腕や体に楓を感じるが、気にしても仕方がない。 夜の静寂に包まれた俺の部屋の中、楓の寝息と時計の針の音だけが耳に入ってくる。 目を閉じたまま、どれくらいの時間が経ったのだろうか。 ふと、頭にある映像が映し出された。 …………。 今、この状況で一番ヤバイ映像である。 ちなみに目を閉じている為、現実に今見ている物ではなく、記憶の中にあるものだ。 …………。 それは、あろうことか、男鹿の野郎が俺に寄越したある本の中身なのだが、これが実にヤバイ。 なんつったって、兄×妹の18禁的なアレな本なのだから。 …………。 おいおい、俺よ。なんつータイミングでなんつーもんを思い出すんだよ。 一つベットの中、妹が兄に抱きついているこの状況だぜ? やれやれだな。能代 雄一よ。 ……くそが!! 「……んっ。ゆう……いちなら……いいよ……?」 !? 楓よ、なんつータイミングでなんつー寝言を言うのだ!! 落ち着け。落ち着け落ち着け。 オーケイ。能代雄一。 とりあえず大丈夫だ。 あのアレな本の中身は、お兄ちゃんに絶賛片想い中の美少女な妹の話だったではないか。 確かに楓も美少女だが、俺に絶賛片想い中なんて事は有り得ない事だろう。 そうだ。うん。 だから、あの本のような事には絶対にならないんだ。 楓は俺に甘えているだけなのだからな。 俺は自分に言い聞かし、目を開け、妹の姿を見て落ち着こうと考え、実行した。
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