死神

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全身火傷のルシフェル。 「クッ……」 ルシフェルは咄嗟に何かを思い出したかのように、辺りの瓦礫や物をよけて何かを探す。 すると、屋根の破片の下敷きになっているグロウを発見した。 ルシフェルはグロウの脈を計り、生死を確認する。 「息はまだあるな」 ルシフェルはグロウを担いで外に連れだそうとするが、爆撃機のお陰で辺りは火の海。 「冗談キツいな」 だが、ルシフェルの顔には余裕が見えた。 死が近くになるにつれ、可笑しくなってしまう人間もいる。 ルシフェルは他の人を助ける余裕が無いと思い、咄嗟に見つけたマンホールの中に身を隠す。 「やはり臭うな」 ルシフェルは犬の十倍の嗅覚を持ち、とても鼻がいいので、下水道の臭いがとてもキツいのだ。 下水道をしばらく歩くと、ルシフェルの隣りで唸り声が聞こえた。 それはグロウのものだ。 「ここは……何処だ?」 グロウの視界はぼやけていて、ほぼ何も見えない状態だ。 「下水道だ」 グロウは間を空けて答えた。 「ルシフェルか……」 「ああ…… 体の具合はどうだ?」 「良くはないな… 吐き気と、目眩と、身体中が熱い」 「だろうな… 政府がこの街の異変に気付いたはずだ お前は暫く政府に面倒を見てもらえ」 「政府嫌いなんだが……」 ルシフェルは暫く黙り込んでしまう。 「そうだったな」 そう言った後、暫く会話をせずにひたすら歩き続けて、一番火がマシな場所にようやく辿り着き、そこからこの街を出た。
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