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「親父
その包丁は何だ?
相当古びていて手入れもしていない様子だが」
ルシフェルはジョッキや皿をなどを、収納している少し長めの食器棚の右隣の壁に並べてかけられている包丁10本の中の1本を指してようだ。
「死神でも包丁に興味があるのかい?」
「ああ
と……言うかその包丁に興味がある
悲しみのオーラが見える
包丁が泣いているように見えるんだ」
すると、マスターは少し黙り込んでしまう。
間を空けて、濡れたコップをタオルで拭きながら口を開く。
「これは息子が人を殺してしまった時の証拠品さ」
「押収され無かったのか?」
「されたが、返してもらえるように頼んだんだ
何かがあれば、また警察に渡さないと言う条件で……
人を守るために、人を殺めてしまった
説得しても止まらない
究極の選択だって……
愛する人か、変わり果ててしまった親友か……
あんたはどうだい?」
ルシフェルはビールを一気にグイッと飲み干し、ジョッキをそっと置く。
「こんな所で話すのは野暮だな……
まあ気分がいいから答えよう……
俺は正直分からない
世間は俺をどう評価しているか知らんが、少なくとも善人は殺していない
人を殺すのは慣れてしまったが、人を殺すのを決めるのは人が決めていいのかなって……
いくら、俺が世界のお偉いさんから頼まれている仕事とは言え……な…
勘定置いて置くぞ」
すると、ルシフェルは酒場から出た。
世間が評価している死神とは、似て似つかないものだった。
何も考えず人を殺めている人じゃない。
同じ人間何だって、この酒場の人間達は思ったのだった。
不思議とルシフェルをけなす者は1人もいなかった。
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