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「うわ、すっげー広い部屋っ。あ、あずまいたー!」
その言葉にセレがぴしりと固まる。
いた。力を抜ける人が。
「もうさ、城に入るのに荷物検査されてすげー待たされたんだぞ、あずま先行っちゃうしずるいっ。」
ムサシの言葉にあずまは額を押さえた。
「ずるくねぇだろ・・。あ、親父、こいつらが俺のダチ。」
「おお、君達がシャルクスの友人か。私はアルド、シャルクスの父だ。ゆっくりしていってくれ。」
アルドが笑みを浮かべる。
しかしムサシは眉をよせてアルドの顔を眺めると、エリーの方を向いて呟いた。
「なぁなぁ、このおっさん何て言ってるんだ?」
「分からないけど城にいるんなら偉い人じゃないの!?ど、どうしよう・・。」
こそこそと話してはいるものの、残念なことにすべて筒抜けだ。
二人のこそこそ話にセレは冷や汗を流した。
王をおっさん扱い。首切りもののとんでもない暴言である。
幸い王もこちらの言語が通じていないようで変わらぬ笑みを浮かべている。
「あずま様のお父上で、現国王陛下であられますアルド様です。ゆっくりしていってほしいと仰っています。」
セレの通訳にエリーは飛び上がらんばかりに驚いた。
「え、お、王!?ごめんなさい、えっと、ゆっくりしますっ。」
「ありがたくゆっくりさせていただきます、だそうです。」
前半を省いて王に通訳をする。
両方の言葉が分かるあずまはその差に小さく吹き出した。
重かった気持ちが少し和らいだのは、仲間がいるからに違いない。
「おお、そうしなさい。積もる話もあるが、今日は移動に疲れただろう、ゆっくり休みなさい。明日のパーティーの後に色々聞かせておくれ。」
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