0人が本棚に入れています
本棚に追加
思えば自分の人生を大きく変えたのは、セレを探し異国を旅している時だった。
何の前触れもなく、体に衝撃が走って。まるで車にぶつかったかのような、激しい衝撃に気を失った。
そうして眼を覚ましたとき――目の前は血の海だった。
自分の手を見下ろせば、真っ赤に染まっていた。
自分の血じゃない、人の血。服にもべっとりついた返り血の匂いが鼻をついた。
何が起きたのか、分からなかった。
ただひたひたと恐怖心だけが忍び寄ってきて。
状況から見て、自分が殺した以外に考えられなかった。そんなわけないと否定しても、時間がたつごとに人を殺した感覚が手によみがえってきて。
自分が恐ろしかった。何でそんなことをしたのか分からなかった。
それから、意識を失いその間に人を殺めることが繰り返し起こった。
毎日いつ自分が殺戮を犯すのかと気が気ではなかった。
いっそ死ねば救われるとも思ったけれど、死ねなかった。
『命は神様から与えられた大切な物なの、だから、自分の命を大切にね。』
いつも生前に母が言っていた言葉だった。
最初のコメントを投稿しよう!