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『お前に宿った神は強力だが…封じることはできる。その金のピアスを外さずにいろ。それがお前の守りとなる。』
そういってつけてくれたピアスには、封印の力が込められているのだという。
『いつまで封印が持つかは分からん。暴走されては困るからな、お前の見張りが俺だ。一緒に来い。』
有無を言わせず引きずられて連れられた所は小さな家だった。
『もう一人俺が面倒を見てるのがいる。別々になんて見てられるか、一緒にいろ。』
そういって紹介されたのは、自分と同じ年の青年だった。
『えっと・・。』
『俺、ムサシっていうんだ。よろしくな!』
『よろしく・・。』
それが、自分にとって始めての友人だった。
握手する二人を見ながらファルゼンが言う。
『王子だそうだな。普通に暮らすには王子の肩書きは邪魔だろう。何か別の名前を考えろ。』
その言葉に動揺した。
そう言われても、自分の名前などいきなり思いつくはずがないではないか。
その様子を見て取ったファルゼンが、溜息をつく。
『・・あずま。』
『え?』
『お前の名だ、あずま。文句あるか。』
聞きなれない言葉に戸惑う自分にムサシが言う。
『あ、それ日本のことだろ?』
『日本・・?』
どこかで聞いたことがある言葉にシャルクス―あずまは首を傾げた。
・・思い出した、養子であるセレの姉がいた国だ。
『日本の別名をあずまの国という。領地が一つ増えたな、王子。』
ファルゼンが悪戯っぽくにやりと笑う。
その言葉にまだ戸惑いつつも、小さくその名前を呟いてみる。
『あずま・・。』
自分の名前。王子なんて肩書きじゃない、『自分』を表す名前。
名の由来に王子が関係しているのは癪だが、それでも気に入った。
そうして、三人での生活が始まった。
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