あずま誕生日小説

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一方医療室へとたどり着いたセレと天翔は、ノックをして入室した。 医療室に入った瞬間よろめいた天翔をセレが支える。 「どうかなさいましたか!?」 医療室にいた女性が慌ててかけよる。 「いえ、お気になさらず。すみません、少し席を外していただけますか。」 セレの言葉に女性は戸惑った素振りをみせたが、そのまま室をでていった。 「馬鹿か、お前は。」 開口一番貶された天翔は苦笑した。 「ひでー。あずま坊ちゃんに飲ませるわけにはいかないだろ。」 ワインには、毒が入っていた。それも、死に至る程の。 それに気付いたあずまは飲まずに済ませようと思っていたのだろうが、勧められた杯を断るのは体裁が悪い。 「大丈夫、毒は結構耐性あるしな。寝てりゃ治るって。」 「・・もっといくらでも方法はあっただろう。落とすとか、飲むフリをするとか…相手にかけるとか。」 最後の、セレにしては随分思い切った提案に天翔はちょっと頬を掻いた。 「えー…と。ジン、怒ってる?」 「当たり前だ。」 睨みつけられて天翔は縮こまった。さっきの睨みつけてきた男なんかより100倍怖い。 「解毒薬だ、飲め。」 命令形に近い言葉に天翔は大人しく薬を飲み干した。 「んで、やっぱ犯人はさっきのおっちゃんだよな?」 天翔の言葉にセレが頷く。 「・・あぁ、飲み物を勧める素振りが不自然すぎた、間違いないだろうな。さっきの飲み物を持ってきた女性もグルのはずだ。」 その言葉に天翔はがしがしと頭を掻いた。 「あー、陰険な手使いやがって・・。あずま坊ちゃん、残してきちったけど大丈夫だろうな・・?」
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