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庭へ出て二人きりになったところで、あずまは男と向き合った。
「何故お呼びしたかお分かりか?」
あずまの言葉に男は首を横に振った。
「何の理由があるのか・・。見当もつきません、何ですかな?」
面の皮が厚いとはこのことか。
あずまは男を冷ややかに睨みつけた。
「・・毒を盛ったのはお前だな。」
敬語を使う価値すらない。
いきなり口調の変わったあずまに男は動揺したようだった。
「な、何の話を・・。」
「城には監視カメラがある。お前が毒盛るよう仕向けた証拠映像もでてくるだろうな。女に金でも握らせたか、それとも脅したのか?」
侮蔑のこもったあずまの言葉に男が萎縮する。
「あんたが俺の悪評ばら撒こうが嫌味言おうが構わない。けど、他の奴に被害がでるなら話は別だ。」
天翔が毒を飲み干した瞬間の血の気が引いた感覚を思い出して、ぎゅっと手を握り締める。
「暗殺未遂だとか大ごとにはこちらもしたくない。お前の処分は内密に行う。すぐに証拠もでる、逃げようと思うなよ。」
あずまの言葉に男は真っ青になり、続いて叫んだ。
「はは、それが正体かっ。大体異人の子が次期の王などおかしい話だ、国の邪魔だ!殺そうとして何が悪い!?私は正しい!」
狂ったように喚く男にあずまは冷めた目を向けた。
「異人の子が国を治められるとでも思っているのか、お前など死んでしまえばいっ…ぐ!?」
男の胸倉を掴む。
「簡単に、死だとか言うな。その言葉がどんな意味か、分かってるのか?分からせてやろうか。」
ぐっと首を圧迫すると、男の呼吸が荒くなる。
『命は神様から与えられた大切な物なの、だから、自分の命を大切にね。』
自分でさえこうして罵られるなら、実際に異人としてこの国にいた母はどんなに罵声を浴びせられたのか。
それでも母は民を憎むこともなく、人の命をどこまでも尊んだ。
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