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手を放すと、男はそのまま地面に崩れ落ちた。
「ぐっげほ、ごほっ!」
激しくむせた男がぎらりとあずまを睨む。正気ではないようだった。
懐に手をいれ、小刀を取り出す。
あずまに向かって突き出された小刀は、あずまに当たる前に駆けつけたセレによって防がれた。
同時に男も吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「あずま様、大丈夫ですか?」
セレの言葉にあずまは視線を向けた。
「ああ、平気だ。・・・天翔は?」
「天翔なら治療室で寝かせてます。ついてこようとしたので手刀食らわせときました。しばらくは安静に寝てるはずです。」
その言葉にちょっと天翔に同情する。
セレは男に視線を向けると書類をばさりと男にぶちまけた。
「共犯の女性も貴方から頼まれたと口を割りました。防犯カメラから証拠映像も検出しました。」
その言葉に男は目を見開いた。
「その書類は証拠をまとめたもので国に提出するもの。それと、正式な貴方の捕縛許可書です。どうぞ今日の記念に土産になさるといいでしょう。牢の中はお暇でしょうから、じっくりとお読みになられたらいかがです?」
口調こそ丁寧なままだが、セレの凍るような声音と痛烈な皮肉に男はがっくりと膝をついた。
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