あずま誕生日小説

27/31
前へ
/33ページ
次へ
手を放すと、男はそのまま地面に崩れ落ちた。 「ぐっげほ、ごほっ!」 激しくむせた男がぎらりとあずまを睨む。正気ではないようだった。 懐に手をいれ、小刀を取り出す。 あずまに向かって突き出された小刀は、あずまに当たる前に駆けつけたセレによって防がれた。 同時に男も吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。 「あずま様、大丈夫ですか?」 セレの言葉にあずまは視線を向けた。 「ああ、平気だ。・・・天翔は?」 「天翔なら治療室で寝かせてます。ついてこようとしたので手刀食らわせときました。しばらくは安静に寝てるはずです。」 その言葉にちょっと天翔に同情する。 セレは男に視線を向けると書類をばさりと男にぶちまけた。 「共犯の女性も貴方から頼まれたと口を割りました。防犯カメラから証拠映像も検出しました。」 その言葉に男は目を見開いた。 「その書類は証拠をまとめたもので国に提出するもの。それと、正式な貴方の捕縛許可書です。どうぞ今日の記念に土産になさるといいでしょう。牢の中はお暇でしょうから、じっくりとお読みになられたらいかがです?」 口調こそ丁寧なままだが、セレの凍るような声音と痛烈な皮肉に男はがっくりと膝をついた。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加