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ここは街の小さな不動産屋。
古びた商店街の一角に、地元密着型で経営してる言わば老舗店。
そんな萎びた場所で
働き初めてすでに4年目。
安満地 璃子(あまじ りこ)28歳。
空部屋歴、すでに10年。
今部屋を借りたなら、
私ももれなくついてきます。
なんちゃって。
余計に誰も借りなくなるわ。
なーんて自虐的な冗談をかましつつ。
今日もせっせと汗水流して働くのであります。
「璃子ちゃぁーん」
今日も社長の上機嫌な声が店内に響く。
あれは、合図だ。
「いつものお願ーい♪」
「…はーい」
あたしはいつものように給湯室へと向かうと、社長の好物“俵屋”の煎餅、玉露入りのお茶をお盆に乗せる。
それから満面の笑みを浮かべ、社長の座る大きなデスクの前に立つのだ。
「おっいつも悪いねぇ!」
にかっと笑った前歯に埋め込まれた
金歯がちらりと覗く。
どこかの工事業者の作業着みたいな灰色の服の袖から見え隠れする、ゴールドのごつい腕時計。
不動産屋のワンマン社長が板についてる。
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