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「あ、安満地さん俺もお茶ちょうだい」
「俺もー」
「…はーい」
小さく右手を上げながら
目の前のパソコンを見つめる高嶺さん。
ぼってりと肉をつけた中年っ腹が、苦しそうに机に埋まってる。
そんな高嶺さんの言葉に乗っかるように隣で勢いよく手をあげた山口君。
私より年下の癖に妙にふてぶてしい。
そんな二人のことを、あたしは心の中で“ジャイアン”と“スネ夫”と呼んでいる。
そんないつものお決まりの流れに。
また給湯室に戻ると、準備しておいた二人分のお茶を手際よく湯飲みに注ぐ。
それから二人のデスクの上に置いた。
「どーもー」
「あざーっす」
事務所には、社長と二人の営業マン、それから事務兼雑用担当のあたし。
いつもの風景。
いつもの空気。
いつもの会話。
何も変わらない日常に、
今日も淡々と1日が過ぎていく。
ーーそう思ってた。
あの男が
お店に現れるまでは………
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