謎の男。

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ピロンピロンッ どこかのコンビニの入口みたいな 軽快な音が店内に鳴り響く。 お客がやって来たサインだ。 「いらっしゃいませー」 あたしが声をかけると、デスクに座っていた社員が入口の方をちらりと振り返る。 すでに会合と言う名の遊びに出掛けていった社長の姿はない。 ジャイアンは大家に電話をしながら後頭部を掻いていて、スネ夫は暇そうに携帯をいじっている。 あたしはというと パソコンで書類を作成しながら、目だけちょろっと動かした。 すると あたしの視界の先に入ってきたのはーー… 「!!」 金髪で真っ白な肌。 鼻が高くて目が真っ青。 身長も190あるんじゃないかってぐらい超ビッグな男。 そう。 まさに、どこからどう見ても 『外国人』。 その人物を見た瞬間、固まるお店の空気。 こんな小さな古びた不動産屋には 似つかわしくない異国のオーラが漂う。 「………」 「………」 「………」 ジャイアン、スネ夫、そしてあたし。 お互いをうかがうような 三人の視線がぶつかり合う。 「スイマセン」 「!…はいっ」 突然投げ掛けられた言葉に 思わず声を出してしまったあたし。 ……しまった。 いつもお店に来る客を 最初に応対するのはあたし。 色々と情報を聞き出してから、営業マンに代わるのだ。 勢いよく立ち上がってしまったあたしは、外国人の男とバッチリと目が合った。 すると、 男はにこりとあたしに微笑んで。
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