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【あまえる】 例えば君と交じり合うその瞬間に生まれる幾多の境界線がこの世のどれよりも美しい曲線であるはずと、嫉妬深い家猫の冷えた床を撫でる尻尾を眺めても、そう思っていられるように。歩み寄る融点に待ちきれず手を伸ばすようにだらしなく、孤独と隣り合わせの脆い胸抱えて寄りかかるその胸もまた脆くたって、寄りかかって、痛みを預けて、音を覚えて、熱に預けて、めをつむる。猫の鳴き声を軋みに差す。彼女の床を撫でる尻尾も歩く足も決して音を立てない。それにならって僕はすべての摩擦を殺して。陽のよく当たるこの部屋に溶ける。ずっと昔からずっとそうしていたみたく、部屋の記憶に巧みに忍び込んで。怠惰を貪る馬鹿犬だって、夢をみて、罪を重ねてふくれていった。
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