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実の高校が夏休みに入ってから最初の事務所の休日、俺と青子サンが暮らすアパートに小谷親子がやって来た。
実は16才になって小谷の籍に入り、ヤツらは親子になった。
腐れ縁的なアイツら小谷親子は、やたらと俺と青子サンの部屋に来たがった。
小谷と実の性格を考えれば、一度でもウチに来たら面倒なのは目に見えていた。
だから俺は、何度も繰り出される二人からの“遊びに行きたい攻撃”を、すべて撃墜していた。
するとアイツらは、青子サンを狙ってきた。
いや、まぁ、予想はできたが、結果的には俺の注意が足りなかったという事だろう。
とにかく、人の弱みと青子サンの優しさに付け込んだ小谷親子が我が家にやってきてしまったのだった。
「いらっしゃい」
玄関で、青子サンがニコヤカにアイツらを迎える。
その様子は、モヤモヤと嫌な記憶を蘇えらせる光景だった。
あれは、去年の冬。
昔の約束を果たすため、青子サンと二人で旅行に行った時だった。
約束というのは、青子サンを風流な旅館に連れて行くというものだ。
五年前の逃亡中の会話での事だったが、俺はそれを守りたかった。
自己満足だが、あの苦い記憶を少しでもいいものに塗り替えたかった。
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