place1::ヲタ芸隊長と編集長

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 今や運動会やお遊戯会でもこの曲は引っ張りダコ。最初はへんちくりんな動きに目くじらを立てていた大人たちも、子供たちが曲をそらんじるようになると風向きが変わっていた。つまり、自分たちの街の「名産品」のほぼ全てがソラで言えるようになることになるわけで。  たとえばイチゴ1つでも、この近くで作られているブランドイチゴがある。全国的には無名だが。子供たちは、この曲のおかげでそのブランド名を言えるようになり、スーパー等で見かければ、とちおとめのような超有名ブランドよりも地元ブランドに目を輝かせるようになる。あのおねーさんたちが歌ってるのこれだよね、これ食べたい! とねだる。  つまりだ。踊りはともかく、歌詞は大人にウケた。で、妙ちくりんな動きには目をつぶるようになった。  で、今のリトルアリスがある。  「おおきーお友達」は、このオープニング・アクトの間は大人しく手拍子で見守るのがお約束だ。声援もヲタ芸もなし。勝も、それは同じだ。  3番までかけて名産品を並べ立て終わって曲が切れると、盛大な拍手が巻き起こる。 「今日も元気でしたね~」  保育園のお姉さん先生のようなまゆまゆのほんわり声。子供たちのはしゃぐ声は甲高く空に響く。 「おうちに帰っても、おともだちと一緒に楽しく踊ってねー」  あゆあゆが子供たちに小さく手を振ってから、 「はい、キッズタイムはおしまいでーす。次はおにーさんたちに場所を譲ったげてねー」  笑うファンたちと子供たちが交代する。 「お母さん方お父さん方、子供が飽きてグズって手に負えなくなったら遠慮なく退出してオッケィですよー、ちょっと暴れるおにーさんたちもいるから気をつけてねー」  勝とその周りの一団が手を高く上げる。親指突き立てて。毎月通っているファンにはお馴染みのやり取りだ。 「じゃ、行っきゃーすか、まゆまゆ」 「はい、参りましょ~か、あゆあゆ」  2人はまたヘッドセットの位置を直して。  一際大ボリュームで、派手なギターのイントロが流れ出す。
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