002 最後の夏 木下勇一郎

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 だが、迷路が想像以上に複雑で、最初の分岐が五つもあることに、驚き戸惑った。  世界一の売り名は伊達じゃないと言うことか。  しかし、勇一郎はなんとしてもトップでこの迷路を抜け出したかった。  トップで抜け出て、月のネックレスをかけたとびきり可愛い女の子とキスをするのだ。 「どっちに行く?」と、千恵美が声をかける。 「ちょっと待って、考え中」  間違った道は行きたくなかった。  最初の分岐点は重大だ。  じっくりと考え、正解の道を推理しなくては。  だが、背後にひた、ひたと言う足音と、ブツンと言う、スピーカーのスイッチを入れたような音が聞こえて、勇一郎は振り返った。
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