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「おん?なんやええもん持っとるやないか」
人形を肩に乗せ歩く奏に声をかける。
その手にはこの時期に咲く、春の代名詞とも呼べる薄色の花。
俺に比べれば小さな手が持つ桜の枝には、いくつか咲いた花と膨らんだ蕾。
「ん?なんだ、エンドさんじゃないデスか」
なんだとはご挨拶やなぁ。
苦笑してみせるも興味は桜の花。
「それ、どないしたんや?」
何でも黒い白髪頭のデカイ男(どっちなんや)が持っとって、目が合ったらくれたらしい。
「エンド、大変だ!!」
二人(いや、人形も入れて三人か)で桜の花を見ていると遠くからでもわかる黒いマントを翻し、大声を上げながらこっちに走ってくる大男が。
「なんや、喧しいやっちゃな。そない大声あげんな。俺らはB.Dなんやぞ」
捕まりたいんかと凄みを聞かせたつもりやったんやけど、
「アクロちゃんが誘拐された!!」
どうもパニックになってしまったらしく、あんの阿呆はぎゃあぎゃあ喚いとる。
「落ち着きなヨ、エッダさん。アクロが本当に嫌がってたら、タダですむはずないでショ」
「あの黒い白髪頭め…黒マントが俺とかぶっちゃうだろ…!」
話を聞けや。っつーか、
「は?」
桜の枝を見やる。
「桜、見に行っただけとちゃうんか…?」
「…僕もそう思う」
「桜だと!?近くで桜が咲いているとこはどこだ!」
しらんわ。
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