ホテル エアポートイン

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彼の額からは汗は流れていなかった。 表情などなく、真顔であった。 彼はそのまま、席を立って、空港から去っていく。 そして、空港近くにある、海が眺める場所に向かった。 一人夜道を歩いている。ポケットに片手を入れて。 やがて、海が見える場所まできた。彼はフェンスに腕をつき、そこで、ニューヨークの夜景を眺めていた。 虚ろな目で眺めている。 彼は微動だにせず、ずっと眺めていた。 そして、我が娘の顔を、もう一度見たいと想っていた。 しばらくして時が経ったと思うと、彼は腕時計を見る。 10分が経過していた。 「すまない アン……」 ルドルフは、フェンスを乗り越えていった。 その下は、深い海である。 同時刻、空港はパニック状態であった。 「なんだ……煙だ、青い煙だぞ」 先程、ルドルフが座っていた椅子から大量の煙が吹き出している。 近くに座っていた人は、みんな倒れていた。 しかし、様子がおかしい。 死んでいるはずの死体が、動いている。 身体中ボロボロで、それはゾンビ映画さながらの、ゾンビの様な容姿に変わり果てている。 「おい!動いてる!動いてるぞ!」 すると、一つの、変わり果てた姿の死体がよろよろとしながら、立った。 目が、青色に光っている。 「ウァァァァァァァァァァァ!」 その、低い金切り声を挙げたその"死体"は、生きた人間目掛けて突撃してきた。 人々は叫び声を挙げて、一斉に逃げ始めた。 「ゾンビだ!生ける死体だ!逃げろ!」 「皆さん落ち着いて逃げてください!」 その時、逃げ惑う人々の中から武装した警備員がやって来た。 迫り来る"ゾンビ"を、警備員はハンドガンで何度も撃つ。だが、一向にゾンビは倒れない。 「なんだこいつ!クソ!うわぁ!やめろ!」 迫り来る警備員にゾンビは飛びかかり、警備員の首を噛みちぎった。
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