永禄の変

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1965年(永禄8年)6月17日 京の都 この日、ある英雄の命が消えようとしていた。 彼の名は足利義輝。 足利幕府の第13代将軍である。 「これまでか…」 ふん、と鼻を鳴らし呟いた。二条御所の外では士気の声がしきりに響きわたっている。 「あの旗印…三好と松永か」 分かっていた。自分が幕府を再興しようとする動きを疎んじている者がいる事を。だが、まさかこのような強行手段を講じてこようとは予想外であった。 「だが、この首ただではくれてやらん。ただでは…な」 義輝は静かに立ち上がり、刀を畳に突き立て始めた。その数、実に十数本。 それからしばらくして、複数の足音とガチャガチャと鎧が擦れ合う義輝の耳に入ってきた。 「義輝殿とお見受け申す! お覚悟めさ……!?」 どん、と勢いよく襖を開ける音と共に、ある1人の兵が言葉を発したが、それを最後まで言う事はなかった。―――否、言えなかった。 部屋へ踏み込んだ瞬間、義輝にたった一刀で斬り伏せてしまったからだ。
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