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「まだ隊務は終わってない。俺は皆に合流する。お前はもう少しここにいてくれ」
少しだけ笑って私の頭をポンと叩くと沖田は走っていった。
誰も居なくなった部屋。
目の前には動かなくなった人が四人。
金属を感じさせる独特な臭いが充満している。
畳に広がる赤は、まだゆっくりと広がっていて。私一人立っているのが不思議に思える。
「…ごめんなさい……」
武井さんの赤く染まった手を取るとそう声をかけた。
仲間が死ぬのは嫌だ。
仲間の死体なんて見たくない。
……じゃあ、仲間以外なら?
人が人を殺す瞬間を見るのは?
さっき、私は何が怖かった?
わからない……
私は、私がわからないよ………
手が…赤い。
これは武井さんの血だ。
わかってる。
大丈夫、私は誰も殺してはいない。
殺しては……いない?
あぁ…ここは血の臭いがし過ぎて頭が呆っとする。
変になる。
……嫌だ、嗅ぎたくない。
このままで…いたいんだ………
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