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土砂降りの雨は容赦無く地面に叩き付け、ザーザーと一定の速度で雨は音をたてる。
沈黙は嫌いじゃない、色々な音が聴こえてくるから。
けど、今はこの沈黙が重たく感じる。
「……俺さ、好きなヤツがいるんだ」
唐突な優一の言葉に反応が遅れた。
「へっ…?」
「何、驚いてんだよ。俺だって好きなヤツぐらいいたって普通だろ?」
「あっ…そう、だな。わ、悪い」
俺は、歯切れ悪く詫びると優一は寂しいそうに笑う。
優一は誰が好きなのだろうか?
可愛い女のコ?
綺麗な女性?
優しい娘?
気遣いが上手い娘?
色々と考えていくうちに胸がムカムカしたり、モヤモヤとした物が溢れる。
「……告白したのか?」
無意識に俺は、言葉を発していた。
内心、振られていてくれと思っている自分に舌打ちをする。
優一は、苦笑しながら首を横に振る。
「告白なんて到底無理だな。だってさ、そいつスッゴク鈍いんだぜ。俺はさ、隣に居るだけで心臓がバクバクして破裂しそうなのに、アイツは平然と笑っちゃってさ……」
あぁ、聞きたくない。聞きたくない。
耳を塞ぎ、目を綴じたら夢だったら良いのにと現実逃避出来たらと思った。
「話し、ちゃんと聞いてるか?」
「あぁ、勿論、だぜ」
その後、優一は俺の知らない優一の片想いの相手の話を永遠の様に聞かされた。生き地獄ような拷問のような気分だった。
「……好きだって言ったら、振り向くと思うか?」
「さぁ…な。振り向くんじゃないのか」
俺は、半分投げやりで答えた。
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