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付け足すように、俺は一言呟く。
「当たって砕けろよ。俺が、慰めてやるから」
優一は溜め息を吐きながら、小さくしゃがみこむ。
「はぁ………今から告白しようと思う相手に牽制みたいなの張られちゃなぁ…。当たって砕けろか…よし、砕けてやりますよ!!」
「ゆ、優一?大丈夫か?」
正直、初めの方はブツブツ呟いていて何言ってるかサッパリだが、ハッキリ聞こえたのは“よし、砕けてやりますよ”と聞こえた。
あぁ、モヤモヤが増えていく。ムカムカも。
「昭二」
優一は真剣な眼差しで俺を見る。何を言うのだろうか。俺は不安を隠すように、いつもみたいに返す。
「何だ?」
「好きだ」
「何が?」
「ッ…これだから鈍感は…馬場昭二、お前が好きだ!!」
優一は真っ赤になりながら、俺に叫ぶ。
「へっ…ぇええ!?俺!!」
優一に負けないくらい俺も叫んでいた。まさか、俺の事を。
全く気付かなかった。
「悪いな、告白なんかして。気持ち悪かっただろ?でもさ、気付いて欲しかったんだ。俺が、昭二を好きだって」
気持ち悪くなんかない。むしろ、嬉し……。
あぁ、気付いてしまった。
モヤモヤとムカムカの理由が。
「気持ち悪くなんかない。俺も、多分…優一がすきだと思う」
「無理しなくていいぜ」
優一は諦めたように笑い、悲しそうな目で俺を見る。
「無理でもないし、嘘でもない。本当に、優一が好きだ……と思う」
偽りはない。ただ、自信持って“好き”と言えないのは、俺に自身に自信が無いからだ。
優一が俺を好きになる理由が分からない。
俺みたいな普通な野郎を好きになる事が分からない。
「はぁ………良かった!!駄目かも知れないと思ってたから、スッゴク不安だったけど言って良かった」
優一は人目も気にせず抱きつく。辺りは誰も居なくて、良かったと思った。
今更だが、告白も白昼堂々とされ、答えていたことに気付いた。
本当に誰も居なくてよかったと思った。
辺りは雨の音と俺達の鼓動以外音が無く、無性に恥ずかしいがそれと同様に心地好くも感じた。
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