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「ゴメンな、クーちゃん。沢山、待ったやろ?堪忍な」
謝りながら、うちに駆け寄ってくるのはなっちゃん。堂本奈津美だ。
見た目は、美少年のような中性的な顔だ。その為、ファンクラブらしきものがあるらしい。
「ううん。今来たところだから、謝らないで」
なっちゃんの口調が見た目と反してギャップ萌?が広がって、“奈津美お姉さま”なんて呼ばれているそうだ。
「ホンマに?うちの前で嘘ついたらアカンよ?」
「うち、嘘ついてないよ。それに待ったとしても、待つのも苦じゃないから」
嘘じゃない。待つこともデートだなんて誰かが言っていたけど、本当だなんて実際に待たないと分からないんだなって思った。
「ホンマ?おおきにな。やっぱうち、クーちゃんが大好きやねん」
「ふふっ…ありがとう」
「クーちゃんはうちのこと好き?」
なっちゃんは不安そうにうちを見る。
「好きだよ。なっちゃん、大好きだよ」
「ッ…クーちゃん、可愛すぎるわ。もぅ…ホンマ、誰にも見せれへんように閉じ込めて置きたいわ」
なっちゃんは、嬉しそうに抱きついてきた。
「もう、なっちゃんたら」
うちは苦笑しながらポンポンとなっちゃんの背中を軽く叩いた。
うちは気付いていなかった。
抱きついていたなっちゃんの目は笑っていなかったことを。
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