ヘタから始める合唱曲

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 別の日のお昼休み。天気がすごくいい日だった。  私は典人せんぱいを見つけた。  植え込みのところで雑誌をのっけて昼寝してる。  もう、このときには、直人せんぱいと見分けがつくようになっていた。 「おーい、もう一人の瀬能せんぱいや~い」  少しだけ頭にのってる雑誌がずれた。完全に典人せんぱいは無視している。  でも、私は負けなかった。 「おーい、おーい」  そのまま、一分くらい呼び続けたと思う。  雑誌が完全に典人せんぱいの顔から落ちた。 「うるさいぞ、お前!」  とうとう根負けした典人せんぱいが起き上がった。片耳にはイヤホンをつけていた。 「人が気持よく寝てたのになんてことをしやがんだよっ」 「そういえば、せんぱい、音楽嫌いじゃないんですか?」  イヤホンから音が漏れてるのを聞いて私は言った。 「……なんで知ってんだよ」  典人せんぱいが顔を嫌そうにゆがめた。  これは、直人せんぱいの方は絶対にやらない表情だ。なんだか私には貴重なもののように感じた。カメラがあったら一枚記念にとっておきたいところだ。 「え、まあ、見てるとなんとなく分かりますし」 「どーせ、直人か宇川だろ」  完璧にバレている。  直人せんぱいと企んでる『典人せんぱいに音楽を好きになってもらおう作戦!』も見透かされてるんじゃないかと思った。  私は怪しまれないように話をそらすことにした。 「今、音楽聞いてますよね?」 「ああ、これか」  なんでもなさそうに典人せんぱいは言った。 「直人の曲なんだ。あいつ、なんでもうまく弾くし」 「そうなんですか」  私は驚いた。 「ってか、口が滑った!」  典人せんぱいはあわてて言った。赤くなってる。 「今の、直人にはぜってーに言うなよ? あと、宇川にも」  私が行くときにもう一度念を押すように言ってた。  でも私は良いこと聞いたような気がしてうれしかった。  なによりも、双子っておもしろいなぁって思う。  それにしても。  思ったより、典人さんの音楽嫌いは治ってるんじゃないのかな?  合唱練習の時にお昼休みのことをこっそり直人せんぱいに教えてあげた。  なんだか、直人せんぱいはうれしそうだった。  にこにこしてたし。そのまま笑いながら、楽譜を見てうなっている典人せんぱいを小突いてた。典人せんぱいは気味悪そうな顔して、直人せんぱいを見てた。
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