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「…それ、マジで…?」
グッと胸ぐらを掴む斗真さん。
それに両手を上げて敵意がないことを示した東條さんは、
「だから、喧嘩は売ってないですって。
課長を上司として尊敬してるし、人としても俺は好きなんです。
ただ、川崎のことは諦めれない。
本当の事を言わないのは、課長に対して失礼かと思ったんで言ったまでです。」
きっぱりはっきりと、そう宣言した。
それを聞いた斗真さんは、掴んでいた胸ぐらを乱暴に解いて、そのまま私の方へと手を伸ばす。
「唯…行こう。」
腕を凄い力で引っ張られ、東條さんに背を向けどんどん歩いて行く後姿を、もつれた足でなんとかついて行った。
頭の中はぐちゃぐちゃで、今の2人のやり取りがぐるぐる回ってる。
東條さんの突然のカミングアウトに、何がなんだか…
「課長!
川崎は、きっと俺を選びますから。」
後ろから響いた言葉に、ギョッとする。
私の気持ちがどうなるかなんて、そんなの分かるはずない…
確信めいた言い方をした東條さんに、言い返そうと振り返る。
斗真さんも急ぎ足で進んでいたのが、ピタッと止まった。
急に止まるから、勢い余って背中に顔面を強打する。
「ーうっ」
低い呻き声が出た。
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