視線の先

14/14
9321人が本棚に入れています
本棚に追加
/539ページ
ドクドク…なんて、生易しい音じゃなくて、 ドッ ドッ ドッ!! 半端じゃなく、フォルテシモ!! ふわっと風が動いて、私の鼻を掠めたシトラスの香り… 腕の中から解放してくれた東條さんは、私の真っ赤な顔を覗き込み一言。 「付いて、来るよね?」 あくまで私に同意を求めているけれど、強い眼差しが語っていた。 『付いて来い』と… 考えるより先に、身体がイエスと答えてしまっていた。 頭をブンブンと何度も縦にして。 薄ら笑いを浮かべた東條さんに、私の思考は完全に停止させられて、気付かぬうちに店に着いていたようだ。
/539ページ

最初のコメントを投稿しよう!