一度目のターニングポイント

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一瞬で、その声がした方向へと顔を向ける。 ここには他に誰も居ないと思っていたから、私は驚いてしまった。 少し離れた暗がりの中から近付く影は、挑戦的な強い眼差しで斗真さんを真っ直ぐに見据えている。 私はその姿を見て、口から魂が抜け出そうになった。 「東條…」 横で呟く斗真さんも、目を大きく見開き驚きを隠せずにいた。 「…課長の知りたかった事、俺が話しますよ。」 すぐ側まで来た東條さんは、ベンチに座る私達を見下ろし…というより斗真さんだけを視界に入れて言った。 私なんか、まるで存在してないかのような扱いが、余計に心臓に悪い。 最初は驚いていた斗真さんも、しだいに顔の表情が引き締まり、いつもの優しい瞳に力が込められた。 そして、音もなく立ち上がると、東條さんと同じ目線でびっくりするぐらいの低い声を出す。 「お前…、喧嘩売ってんの?」 静かに怒りをぶつける斗真さんに対して、視線を逸らすことなく、いつものクールな態度のままでいる東條さん。 「まさか。 そんなつもりは全くないですよ。」 私は、そんな2人に声を掛けれずに、パニクりながらも目を外せなかった。 少し間を置いてから、 口元に笑みをたたえた東條さんは、付け加えるように言い放つ。 「でも、 奪える隙があれば、川崎を奪うつもりではいますけどね…」 この瞬間、私の魂は空へと消えて行ってしまった…
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