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ちょっと待って…
今、全てを暴露するつもり…?
それは…それだけは、やめて下さい!
激し過ぎる動悸で、呼吸困難に陥る。
吐き出す息は深いのに、胸が詰まって吸い込む空気の量が極端に少なくなった。
落ち着け…
落ち着つくんだ。
息を整えようと肩を大きく震わせていたら、それを察知したかのように私を抱く腕に力が込められた。
そして、東條さんが口を開く前に上から落ちてきた声。
「お前は何も言わなくていい。
どういう意味かは、唯に聞くから。
それが、例えどんな内容だったとしても…」
しても…?
「お前に譲るつもりはない。」
毅然と響いた。
今度こそ振り返らずに私の手を引き、その場を後にする。
東條さんも私達が中庭から出て行くのを、止めることはしなかった。
私は、さっきの斗真さんの言葉に感動し、泣きながら歩いていた。
東條さんにつけ込まれる隙を作り、それに捉えられ、逃げれなかった自分が情けなくて。
東條さんのキスを受けて、抵抗するどころか欲してしまった事実。
一瞬でも、自分の意思で斗真さんを裏切った事実。
それが…凄く惨めで。
斗真さんに、
そんな事を言って貰える資格なんか、今の私にはない。
なのに、
想ってくれている気持ちが染みて、涙が止まらなかった。
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