9339人が本棚に入れています
本棚に追加
バカでかい山瀬さんの声が耳に入ってきた。
「寝かせてくれない彼氏がいるなんて、羨ましい!」
は…?
彼氏…だって?
真っ赤になりながらも、それを否定しない彼女。
おいおい…
仕事中にする話しじゃないだろう。
叱るべきは山瀬さんなのは分かっていたけど、今日一緒の時間に出勤したのに遅刻ギリギリで入ってきた彼女が気にかかる。
目も、確かに充血していたし…
すぐに彼女を呼んだ。
一瞬気まずい表情をしたけど、やはり俯いたままでやって来る。
いつもの事だけど、今日はちょっとムッとした。
会議担当が嫌なのは知っていたけど、任せたのは意地悪だ。
ついでにコピーも頼む。
会議室の用紙がなくなってるのは知っていたけど、それは教えてやらなかった。
2人になる口実を作る為に。
難しい顔で出て行く彼女を見送り、そういえばA4の用紙が切れてたな…なんてわざとらしく呟いて、後ろの棚へと向かう。
「ちょっと届けてくるから。」
コピー用紙を抱え、フロアの皆にそう声をかけると後を追った。
正直、彼女が心配だ。
大人しくて、自分の意見をはっきり言えないから、悪い男に騙されてるんじゃないかと思う。
それが仕事に支障をきたしているとしたら、ここは上司として言っておかなければならない。
彼女が気になる…のは、純情そうで危ういところがあるからだろう。
恋愛としてではなく、気分は近所のお兄さんにでもなったかのような、そんな感じ。
最初のコメントを投稿しよう!