光の向こうへ

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やや高い位置にある窓から、穏やかな夕方の日差しが差し込んでいる。 その光を浴びながら、貴人は手元の書物に視線を落としていた。 此処は貴人のお気に入りの場所でもある書庫で、尋常ではない広さの其処に、膨大な数の書が詰め込まれている。 書と言っても形態は様々だ。 創世の頃からのものが数多収められているので、それは竹簡であったり巻物であったり草紙であったりまがりなりにも冊子の形をしているものだったりと色々である。 此処には、歴史となった時代たちが多く存在する。 「…………」 黙って文字を読んでいた貴人だったが、やがて一つ息をつくと、それを閉じた。 一応冊子の形をしているそれを元あった場所に戻しながら、しかし貴人の表情は晴れない。 「……どういうことなんだろうか」 それは口に出そうと思ったのではなく、無意識に零れ出た言葉。 此処最近のことだが。地上の――帝都で。穏やかならざる事態が起こっている。 妖魔の出現。 無論、妖魔の存在はずっと在ったものだし、それが人間達に悪影響を及ぼした事件も今までに数多くある。 だが、ここの処の帝都での妖魔絡みの事件の多さは、普通ではない。もっとはっきり言えば、異常だ。 その状況をいち早く察して過去の事例を確認に来たのだが、朝から今まで、それこそ数え切れぬ程の書を取り出し見てみたが、参考になるような記述は見当たらなかった。 つまり、今ここまでの現状は過去に例がなく、そしてそれに対する方法も、現時点では解らないということだった。 ふう、と落とした溜息に我に返り、貴人はゆるりと首を振った。 いつまでも此処でこうしていても仕方がない。 それに、多くの書を見たと言っても、元来の書の数からすると手に取ったのは雀の涙程の数もない。 明日以降にまた探してみようと、今日は切り上げることにした。 ……こうしている間にも妖魔の跋扈は増え続けているのだろうかと思うものの、手立てがないのも事実だ。 せめて取り返しがつかないことになる前にはなんとかしなければならない。……最終的には、十二天将全員の力が必要になるかも知れないと。其処まで考えながら書庫を出ると。
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