滑落

3/3
前へ
/19ページ
次へ
妖怪の山。 雷がある中を、空から哨戒する気にはなれない。 犬走椛は森の中を歩いていた。 千里先まで見通す力があれば、別に森の中からも哨戒は可能であった。 しかし今日の哨戒は既に終わっており、後は帰るだけであった。 早く帰ってこの濡れた体を温めようなんて考えながら、歩いていた。 その時だ。 血の匂いを感じた。 自分達天狗の縄張りで何かがあってはそれを確認せねばなるまい。 匂いは西からのようだった。 目を凝らす。 ここから500mほど先に、誰かが倒れているのは確認できた。 次は実際に現場へと行ってみる。 倒れているのは人間だった。 まだ息はあるが、服はボロボロで、左腕は変な曲がり方をしている。頭からは出血もあるようだ。 流石に目の前で死にかけている人間を放っておく事は出来ない。 椛は人間を担ぎ上げ、自宅へと飛んだ。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加