19人が本棚に入れています
本棚に追加
妖怪の山。
雷がある中を、空から哨戒する気にはなれない。
犬走椛は森の中を歩いていた。
千里先まで見通す力があれば、別に森の中からも哨戒は可能であった。
しかし今日の哨戒は既に終わっており、後は帰るだけであった。
早く帰ってこの濡れた体を温めようなんて考えながら、歩いていた。
その時だ。
血の匂いを感じた。
自分達天狗の縄張りで何かがあってはそれを確認せねばなるまい。
匂いは西からのようだった。
目を凝らす。
ここから500mほど先に、誰かが倒れているのは確認できた。
次は実際に現場へと行ってみる。
倒れているのは人間だった。
まだ息はあるが、服はボロボロで、左腕は変な曲がり方をしている。頭からは出血もあるようだ。
流石に目の前で死にかけている人間を放っておく事は出来ない。
椛は人間を担ぎ上げ、自宅へと飛んだ。
最初のコメントを投稿しよう!