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結局三日ほど少女に看病された。
怪我の治癒は驚くほど早く、二日で腕は自由に動かすことができるまで回復し、脚も歩けるようにまでなった。
しかし右目はどうやら滑落したときに破裂したらしく、無くなってしまった。
利き目を失い、これから不自由な生活になるだろう。そう思うと、気が滅入る。
しかも、言葉が出すことができない。喋りたくても、言葉がでない。脳に問題でも起きたのだろうか。
かなりの大問題だ。失明以上に厄介だ。
なにせ少女にお礼の一言も言えず、まだ名前さえ聞いていない。
紙と鉛筆があればいいのだが、この部屋には見あたらなかった。
しばらくだったある日、少女が話しかけてきた。
「外に出てみますか?今日は天気がいいですよ」
確かに、今まで看病されていて、部屋から出るのは排泄の時だけであった。
外の空気を吸えば、この気の滅入りも少しは晴れるかもしれない。
頷き返し、水樹は立ち上がった。
履きならした登山靴を履き、少女と共に外にでる。
目の前には一面の緑があった。
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