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カンカンカン―――
どこからともなく響く金属を叩く音に、威勢のいい掛け声。
やたらがたいのいい男たちが集まるせいで、外では清々しい風が吹いているにも関わらず暑苦しい。
「いやいや、それはさすがに言いすぎか。」
別に制服ではないのに、作業する男たちは皆何故か白いタンクトップ姿。
頭にはこれまた白いタオルを巻き、上半身はピッタリしたものを着ているのに、下半身は反比例するかのように黒いダボダボのカーゴパンツ。
そして仕上げとばかりに、少々へばった黒い編み上げのブーツ。
全員が全員盛り上がった筋肉を惜し気もなく見せつけ、日に焼けた浅黒い肌に汗が煌めく。
いつ見ても標準装備なようなその格好が、もしや自分の知らないうちに流行になっているのかと思ったのだが、もちろんそんなわけがなく。
というよりも、年がら年中あんな格好をしているのはここ―――街から少々離れた場所にある機械修理工場くらいなものだ。
少年は相変わらずと言っていいその光景に痒くもないこめかみをかきつつ、自分の腕に視線を向ける。
作業員たちのように黒く焼けているわけでもなく、かと言って深窓の令嬢のように真っ白というわけでもなく。
まさに普通としか言いようのない肌の色に、男にしては少々―――いや、結構細い腕。
試しに力を入れてみるが、筋肉が盛り上がるような兆しすら見えない。
「これでも、毎日仕事で鍛えているのだけどなぁ~」
貧相な腕を隠すように自身のサイズよりかなり大きめのつなぎの袖を戻し、小さくため息をつく。
しかし若干戻しすぎたらしく、袖から手が出てこない。
少年は何とも言えない複雑な表情で袖を捲りながら、近くに立てかけていたデッキブラシを肩に担ぐ。
今までの仕事ぶりを表すように年季の入ったものだが、これが少年の仕事仲間だ。
「確か、今日は居住区だったっけ―――ウェッ、吐かずにやれるかな……」
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