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「…えぇ、ではまた。今日は碌なお構いも出来ませんで」 「いえいえ。じゃあまたね、マックスちゃん」 こうしてお客様が去り、そろそろ息子が帰ってくる。 そして僕を散歩に連れて行き、深夜近くになると父親が帰ってくるのだ。 そうした毎日、人間からすれば退屈でしょうがないと思うことだろう。実際僕もそう思ってたし。 それが違うのだ。深夜からが僕達の時間。 今晩は、それを君達に見せてあげようと思う。しっかりと聞いておくように。 「そうなんだよなぁ…最近はどうにも蒸し暑い。主人が毛を剃ってくれないから尚更だ」 いつも愚痴ばかりのベルは今日も相変わらず。 彼の口は非生産的な言葉しか紡ぎださない。正直僕は彼をあんまり好んでいない。 彼はゴールデンレトリバーだ。その大きな図体とは似合わず、根は小心者に違いない。 「まぁ気持ちは分かるけどね。もっと面白い話をしてよ」 シャルティはどこか冷たい、他人、いや他犬の気持ちを思いやらない節がある。 しかしその容姿は非常に端麗、くるんとした毛並みがとても可愛らしい。 その容姿と似合った淡々とした態度。彼女はダックスフンドだが、人では無いので短足だから不細工だとは限らず、むしろ好感が持てる。 僕が彼女に恋心を抱いているのはここだけの秘密だ。 「じゃあ私にとっておきの話があるんだけど! ねぇ聞きたい? 聞きたいでしょ? どうしよっかなー」 「………」 「そう? どうしてもって言うなら話したげるよ! そう、あれは今日の昼過ぎのことだった…」 スルー状態のシャルティをお構い無しに語り始める彼女の名はポロ。 柴犬の彼女は、常に有り余るエネルギーを発散する場所を探し求めているように見える。 僕は彼女をムードメーカーだと思っているが、ベルとシャルティはそのようには思っていないようだ。
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