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ここで明確にしておくが、僕、いや、僕達犬は一匹の例外無く人間から転生した者ばかりだ。 頭脳は人間なままであるが故に、繋がれている鎖を解いて脱走することなど容易いこと。 毎晩遅くから始まるこの集会。特に意味があるわけでもないが、強いて言うならば退屈な毎日を紛らわす為の娯楽なのだと僕は思っている。 「……ってわけでね、人ってやっぱ馬鹿だよ。いやまぁ、私も人だったわけだけどさ」 「ほぉ。中々ポロらしい意見じゃないか。だが、俺はポロにも問題があると思う。そう、例えば…」 「…マックス、さっきからずっと黙ってるけど、どしたの?」 そう、この集会こそが僕の楽しみ…という語りは、飽き飽きとした表情のシャルティの一言で途切れることになった。 君達には悪いけど、僕の説明はここまでだ。 「別に…何か暇だなぁって、そう思ってただけだよ」 「そう。そうよね。私も常々思ってたのよ。毎晩私達はこうして集まってるけど、何かが足りない気がしてならないの」 「そうだね…ベルの薀蓄とポロのどうでもいい話は聞き飽きたし」 「ちょっと! 聞こえてるんだよ!」 こうして好きにだらだら過ごす時間というのも、悪くないとは思う。 犬になってから気付いたことだが、人の時よりも体が丈夫になっている。例えば寒さ、そして暑さなどの気候に対してもだ。 更に足も早くなり、加えて鼻も効く。その分寿命が短いが、死後の世界があると分かった今となっては、死ぬことなど特に怖くない。 知能は人のままで、身体能力は飛躍的に向上したのだ。 初めこそ混乱したものの、もう大分この環境にも慣れてきた。 シャルティの言う通り、僕達のこの集会、何かが足りない気がしてならないんだ。 「私ね、思うんだけど」 「あーあ、何か面白いこと起こらないかしら。夜は長いのよ。もったいない」 「シャルティ、そもそも夜は寝るものだ。俺達がこうして集まってることがおかしいんじゃないか?」 「何よ。ベルは別にお呼びじゃないんだから、帰ればいいじゃない」 いつも通りの会話だ。 内心ベルをあまり良く思っていない僕は、心の中でこっそりとシャルティを応援する。あくまでこっそりと、心の中でだ。
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