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祈ることを諦めたわたしの眼前に広がる世界は、なぜか美しかった。
その世界は広く透き通っていて、遥かかなたを流れる雲はいつまでもわたしを見ていた。
鳥が飛ぶ。車が走る。風は凪ぎ、日は熱する。
日常は固形化した非日常であり、その粒子はわたしの見ている世界の隅々にまで満ち溢れていた。
橋は川にかかり、信号は光る。
たったこれだけのことなのに、わたしの中ではそれらはマニュアルを捨てたヘラクレスと化していた。
涙が頬を伝う。
さあ、旅に出よう。わたしにはきっと、夢ができたから。
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