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手の中の番号札を強く握り締めながら、恵は区役所のロビーの電光掲示板を見つめていた。
――まだかな……もっと時間がかかった方が良いのか、すぐに済んだほうが良いのか、どちらなのか自分でも分からない。
ここで待ち始めてから、どれ位にになるんだろう?
時間の感覚が麻痺している。
この待ち時間の間に、6年間の結婚生活の全てが清算されていくように感じれられて、悪い夢のように現実感がなかった。
125番
電光掲示板に恵の番号が表示された。
受理されたようだ。
離婚成立、重い足取りで窓口に向かう。
婚姻届を出したときは、2人だった。
離婚届を出す今日は、ただ1人。
気がつくと頬を涙が伝っていた。
「大丈夫ですか?」
担当の若い女性の目には同情と、そして無遠慮な好奇心があふれている。
涙をぬぐって
「大丈夫です」
微笑むつもりだったが、無理があるようで顔が引きつるような感じがするばかりだった。
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