第1戦-1

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無難に“優しい方”と書いておくことにした。 “優しい方”は元夫を思い出させるので実際には苦手なのだが、ここは無難な内容にしておくのが肝要だろう。 自称“優しい人”というのは、結局“誰にでも優しい”か、“自分自身にだけ優しい”かのどちらかであることが多くて、難しい相手なのは身に染みている。 誰だって“私に対して優しく”して欲しいのは当たり前こと。 極端に言うならば“私に対してだけ優しい”であっても構わないのだ。 カードを書き終わって受付に戻ると、名札を胸につけるようにいわれた。 「プロフィールカードはお話しするお相手にお渡してくださいね。 では中に入ってお待ちください。」 ゆっくりと扉を開けた。 足が緊張で少しだけ震えているのを感じながら会場の中に入っていった。
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