00.徒然なるままに

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「ミズホ先輩~」 朝の更衣室で掛けられた、すがり付くような猫なで声に、私はブラウスのボタンを留めつつ振り返った。 「朝から辛気臭い声出してどうしたの?」 声の主であるショートボブの彼女は、制服のスカートを私の目の前に拡げる。 「もう最近食べ放題にはまってて、これ、ホックが……先輩、ソーイングセットなんて持ってませんよね?」 三年後輩の新谷雪菜(しんたに ゆきな)、通称、新谷ちゃんは、外れかかったスカートのホックを指差してヘラリと笑った。 スカート……私もちょっとヤバイかも。 彼女の言葉に自らのお腹をチラリと確認し、ウエスト部分に若干乗りかけた肉を凹ますように力を入れた。 「針と糸なら机の中だけど……」 上目遣いで此方を見る彼女に対する一抹の不安から、語尾が曖昧に掠れた。 「流石!じゃあ先輩お願いしまーす」 やっぱり……。 猫なで声+上目遣いの最強コンボは、男でなくてもノックアウトされると思う。 しかも、彼女は高卒二年目のピチピチ二十歳娘。 最強コンボに若さが加われば、もう神だ。 気付けば私は、彼女のスカートを手に自分の席に座っていた。
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