12話

6/10
前へ
/31ページ
次へ
「「お願いします!」」 雪羽のチームは竜眞、雪羽、新羅、花野、濱の5人がスターティングメンバーで始まった。 相手チームはさっきの爽やか君を含めての5人だ。 「ジャンプボール、俺行くぞ」 「頼むで、空牙!」 「任せたっ!」 センターラインを挟んで、相手側の生徒と新羅が向かい合う。 ピーーーッ!! 甲高い笛の音と共に、勢いよくボールが宙に放たれた。 「雪羽っ!!」 「任せろ!」 新羅が後ろへと弾いたボールが、バスケ部でなかった故にマークの甘くなっていた雪羽へと向かう。 雪羽はそれをしっかりと受け止め、身を低くしながら一気に駆け抜けた。 「えっ!?」 「嘘、はやっ…!」 周りが口々にそう言う中、雪羽は相手コートのゴール近くに滑り込んでゆく。 待ち受けていたと言わんばかりにゴールを守るために戻っていた爽やか君が、雪羽のシュートコースを防ぐように飛んだ。 ダンッッ!! 「っ、!!」 雪羽の身体が、体中のバネを使って爽やか君から遠ざかる。 そして雪羽は飛び退いた最も高い地点でシュートを放った。 ボールは雪羽の指先から離れた後、流れるような動きでループを描いてゆく。 そのボールは、ジャンプし終えた爽やか君の手の上を難なく乗り越え、ボードに一度当たってゴールの中に落ちていった。 ボシュッ!! そんな、布の紐とゴムの擦れる音がする間も、雪羽はリバウンド─つまり自分がシュートを外した際にもう一度ボールを取れるようにゴールの下へと駆け込んでいた。 なんの喧騒も無いまま雪羽のシューズの音だけが鳴り、ゴールを抜けたボールが跳ねる音がそれを追う。 それは、開始僅か4秒の出来事。 一介の高校が行う球技大会では信じられないような光景に、コート内にいた生徒どころか、その一部始終を見ていた、先生を含めての皆が声を出せずにいた。 そんな中、ボールの行方を知った雪羽はそのゴールを見上げながら小さくガッツポーズを決めた。 「よっしゃ」 、 うぉおぉぉっ!!! 雪羽のその言葉に、皆の時が動き出したかのように歓喜と興奮の声をあげる。 チームのみんなが口々に雪羽を褒め、相手チームが初めて雪羽を"同じゲームをするプレイヤー"だと認める。 あの、爽やか君でさえ。 そしてそれに気付いた雪羽も、喧嘩相手に見せる笑みを浮かべて声高に言い放った。 「もう一本!次は本気で言くぞ!!」 .
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

88人が本棚に入れています
本棚に追加