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「まぁさ。じいさんも今頃上にいるんじゃないっすかねー」
彼はそう言いながらネクタイをゆるめ、空を見上げる。
私も同じように空を見上げた。
煙草のもやもやがうっすらと見え、消えていく。
ハルオの魂は梯子をちゃんとのぼったかはわからない。
けどきっと、この上にいるんだろうと思う。
そしてベンチの背もたれに体重をかけて、首をさらに後ろへと落とした。
若干逆さまにも見えるが、ベンチの後ろに生えまくる桜の木が目に入った。
首が痛くなってすぐにまた前を見たけど。
「……何の話してたんだっけ」
頭をかきながら私は携帯灰皿に煙草を捨てた。
「じいさんの話っすよ」
彼は背伸びをしながらベンチから立ち上がり首をゴキゴキと鳴らす。
そして手を差し出された。
「そろそろ時間なんで行きますか」
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