桜色の天にのぼる

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「さっきの話」 「ん?」 「天葬」 ああ、と彼は言って私にジッポを貸してくれと手を出した。 ゴツくて、でかい手。 「葬儀を終えた肉体はもうただの抜け殻なんだって」 「抜け殻、か」 彼が吸う煙草の煙が私の顔の前に漂い、視界をぼやけさせる。 「他の命食ってきた人間だから、死後は他の命のために食われましょう……ははっ」 自分で言っておいて笑ってしまった。 これを知った時には関心したのを覚えている。 深く煙草を吸い込み、吐き出した。 「……日本じゃ無理でしょう? 鳥とか」 「そりゃね。日本は火葬が決まりごとだもの」 土地もないし衛生上のなんとかとか、無宗教の人が多いのも理由の一つ。 「私は出来れば天葬したい」
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