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蕎麦は、確かに絶品だった。店を出てから腹ごなしに暫く京の町中を散策し、甘味に舌鼓を打っているうちに夕刻になった。
「あーあ、時が経つのは早いなぁ」
夕日を恨ましそうに眺めて、沖田が呟く。
「でも、大丈夫なんですか? 結構な出費でしたよね?」
そう。甘味屋で、沖田はこれでもかと思う程の量の甘味を注文し、しかも全て一人で平らげた。
「だいじょーぶ。このお金は土方から盗…ゴホン、貰ったものだから」
「貰ったもの、ですか」
「そう☆」
哀れ土方。斑が心の中で土方に両手をあわせていると、不意に沖田が声を上げた。
「そうだ。斑ちゃん、着いて来て!」
「え?」
訳が分からずに目を瞬く斑の手をまた握って、沖田は駆け出す。
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