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東京都郊外・6月某日ーーー
梅雨が明けて一層青くなった空、木々の木の葉を揺らす涼しげな風、そしてサンサンと少しずつ熱量を増していく太陽。
そんな太陽に煌めく俺の汗も心なしか爽やかに感じられる。
気候に恵まれた素晴らしいこの日、俺は学園の敷地をどこぞの駿足ハリネズミが如く疾走している。
ここで問題だ。
なぜインドア派であるこの俺が、こんな天気のクソ良い日に走り回っているのでしょうか?
パシリで足を鍛えるため?それとも、実は俺がドMの変態野郎だから?
答えは簡単。
ロープや手錠をはじめとする拘束具、バットや竹刀、さらにはアーチェリーやボウガンなどを装備した我が晴海学園の生徒達が、一つの群となって後ろから追いかけてくるからだ。
恐怖以外の何ものでもない光景である。
しかも追ってくる生徒は様々で、先輩後輩同学年男女入り混じりの大集団だ。
時折、
『恭助(君・さん・様)ー!待ってー!!』といった女子の声や
『副会長、ここで死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええ!!!』『ウホッ……いいおとこ や ら な い か』などの冷や汗が止まらないようなセリフも聞こえてくる。
ここで捕まったが最後、
俺の貞操はもちろん奪われ(♂的な意味で)、恥辱にまみれて死ぬコトになるだろう。
何があっても、それだけは阻止せねばっ!
最優先事項を頭の中で再確認していると、背後から、ヒュンっという音と共に何かが飛んでくる気配がした。
「うおっ!?」
走り続ける体制はそのままに、勘を頼りに思いっきり横っ飛びをする。
ドドドンッ!と音がした方を見ると、俺が1秒前までいた場所に矢が何本も突き刺さった。
『チッ、外したか……』
しかも舌打ち付き。
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