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今俺は、学園の数ある地下施設の内の1つに身を潜めている。
私立晴海学園、この学園は日本随一と言われる如月財閥の総裁、如月師走というクソジジィが道楽で建てたものだ。
幼稚園から大学院までが同じ敷地にあり、とにかくバカでかい。
そんなもんだから、学生は皆寮に入り(中学生以上のみ)、同じ釜の飯を食べている。
しかし学園と言っても、敷地内にはゲームセンターやカラオケなどの娯楽施設をはじめ、専門的な分野を研究する研究所や、全国トップクラスの成績を残す運動部のための広大なグラウンドやジムがある。
いわゆる、学園都市ってやつだな。
「いたぞー!こっちだー!!」
「チッ、もう来たのかよっ!?」
俺は今まで隠れていた地下研究所を飛び出し、また全速力で走り出す。
向かうは、ここからだと少し遠いが地下街区画。
人ごみに紛れる作戦だ。
「きゃあ!?」「あぶねぇぞ!」「こんな所走ってんじゃねぇ!!」
「すいませんすいません、でも俺が悪いんじゃないんです!」
道行く人と多少ぶつかり、謝りながらも、尚足は止めない。
放課後のため、かなりの生徒が道に広がっていて、思うように前へ行けない。
「あそこだ!今なら追い詰められる!」
「……仕方ないッ」
俺は目の前の人垣を超えるため、短い助走をとる。
スピードが乗ってきた瞬間に、壁に向かって足のバネをフルに使っての跳躍。
壁に激突すると思いきや壁を一歩、二歩、三歩と走り抜けていく。
コレが秘技・壁走りの術である。(友人命名)
「ママー、ふくかいちょさんが、かべはしってるよー」
「あらあら、スゴいわね~」
「(->ω・)☆キラッ …………っとっと、うわぁぁ!?!?」
壁を走る俺を見た園児と母親が感想をもらしたのを聞き、ファンサービスをしたのが運の尽き。
迫り来る看板に気付かず、顔面から直撃した俺は壁から落ち、周りから生温い視線を受けるコトになったのだった。
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