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教壇の上から俺にチョークを投げてきたのは、我が麗しのゴブr……じゃなかった、我がクラスの担任、一ツ橋 薫[ヒトツバシ カオル]先生だった。
仕事中は見た目通りの美人キャリアウーマンで、男子だけでなく、女子からにもかなりの人気を持つ。
なのに、仕事以外だと中身が中年のオッサン化し、それを知るのはごく一部となっている。
「ったく、あの程度のチョークぐらい避けて見せろよ。副会長だろ」
「いや、役職関係ないですってば。つか、あの高速殺人チョークをどう避けろと?」
「? 二宮書記はしっかり回避してるぞ?」
そう言われて右を見ると、微笑を浮かべ、人差し指と中指で眉間へのチョークを、完璧に止めている魁斗がいた。
……開いた口が塞がんねぇ。
しかも少しカッコイいのが、さらに腹立つ。
「あ、このチョークはもらっときますね(笑)」
「やるな二宮書記、さすがだ」
「いやいや、先生こそ」
『おぉぉぉ~~~!!』
魁斗と先生の一連のやりとりに、クラスメート達が感嘆の声をあげる。
俺、完全に蚊帳の外である。
「よし、時間もちょうどいいし、今日の授業はここまで。各自、しっかり予習復習しとけよ」
『はーい』
授業終了のチャイムと共に、先生は教室を去って行った。
そして休み時間。
「あのぐらい、いつもの恭助なら避けられたんじゃないの?」
「無理に決まってんだろ。音速超えたチョーク避けれんのは世界でお前とセガールだけだ」
「普段、矢とか鉄球とか火の粉とか甲羅とかキラーとかジャンプしまくってんじゃん(笑)」
「俺はいつから、キノコ王国所属のしがない配管工の親父になったんだ」
休み時間、魁斗と下らない話をしていると、前からトテトテと誰かが来た。
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