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「私の開発した薬の効果の実証に、あなたの力を貸して欲しいの。どうかしら。」
「は、くすり…?」
「そう。正確には“心強自我丸”(しんきょうじががん)というんだけど。」
たしか、高嶺さんって化学部だったよね…。
そんなこともできるんだ!?
でも薬の開発ってライセンスとかいるんじゃ…。
「これはにはね、一粒飲むだけで自信が沸いてくるという他に、心を落ちつかせたり、冷静に物事を考えることができるようになったりする効果があるの。」
なんか…勝手に話進められてる?
「ただし、効果が続くのは一粒につき一時間だけ。斉藤さんにはこのサンプルを5粒受け取ってもらうわ。」
はい、これ。と高嶺さんは、茶色い瓶をわたしに握らせた。
「あの…。」
「薬はそのまま、噛まずに飲み込むこと。水もいらないわ。」
「ちょ、待って…!!」
「大丈夫、副作用は絶対出ないから。斉藤さんは好きなときに心強自我丸を使ってくれるだけでいいの。…じゃあ、よろしく。」
喋り終わると、高嶺さんはつかつかと教室を出ていった。
わたし一人が教室に取り残されてしまった。
「ど…どうしよう。断れなかった。」
わたしはどうすることもできずに、ただ高嶺さんに渡された瓶をしげしげと眺めつづけた。
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