6人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
こんにちは、乙-イツ-です。
突然ですが、今日我が家にはパソコンなる時代の進化の結晶が家に届きました。
何かと必要だと感じた過保護祖父が注文してくれたらしいのですが、正直僕は機械音痴なので使う事は相当ないと思うのだが…
「兄ちゃん、パソコンってどうやって使うの?」
この不思議そうにマウスを握りしめているのが我が家の長女。
成宮 弥生-ヤヨイ-だ。
年は15歳の中3、サラサラの長い金色の髪からは常に甘い香りを撒き散らしている。
僕も同じシャンプーを使っているのに可笑しな話よ全く。
「すまん、正直僕も機械はまったくダメだ、ああ全然駄目だ」
血は繋がってないが、やはり家族は似るものだろうか?
どうやらヤヨイも機械音痴らしい、キーボードをカタカタと適当に叩きながら自慢気な顔をしている。
「まったく使い方がわからないわ!
こんな事より夜ご飯の準備でもしよっと」
ヤヨイはそう言いながら名残惜しそうにマウスをデスクにそっと置いて台所に向かって行った。
因みに、我が家では食事当番はヤヨイと僕で週交代をしている。
前に、次女のチトセに任した時は炊飯器の中に暗黒物質-ダークマター-を作りあげたからな。
「じゃあ、僕は明日の食材の買い物にでも行ってくるよ」
「あっ、外に行くなら駅前の角の『あの店』で『あのケーキ』買ってきて!
今すごく食べたい気分なの!」
「たしかに、駅前の角の『あの店』の『あのケーキ』は一度食べたら忘れられない味だからなー」
まぁ、日頃家事を頑張っているヤヨイにご褒美という口実で『あの店』の『あのケーキ』を買ってくるか。
僕も食べたいし…
「行ってらっしゃーい」
「行ってきます」
数時間後、僕はスーパーの特売で買った豚肉と卵の入ったエコバックと『あの店』の『あのケーキ』が4個入った箱を両手に下げながら上機嫌で帰宅した。
玄関のドアを開けた瞬間に、醤油と砂糖の甘辛い香りとグツグツとリズミカルな音が聞こえてきた。
どうやら今日の晩飯は、すき焼きらしい。
僕は密かにガッツポーズを決めてリビングに入った。
最初のコメントを投稿しよう!