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「……どこだここ」
混乱するでもなく泣き叫ぶわけでもなく、ただ冷静に辺りを見渡してみる。
さっきまで東京のスクランブル交差点を歩いていたはずなのに、今の景色はそんなことを微塵も感じさせない。
真っ暗で真っ黒な空間。そこに立つわけでも座るわけでも倒れているわけでもなく、ただ浮遊していた。
どっちが上でどっちが下かなんてわからない。この空間では方角なんてあってないようなものだろう。
「……どこだここ」
改めて全てを認識した後に、さっきと同じセリフを口にする。
俺はどうなった?
なんでこんな場所にいる?
どうやってここに来た?
次々と疑問が浮かんで来るが、何一つ解答など得られない。そろそろ頭がおかしくなりそうだ。
「ギヒッ! 気分はどうだ? 人間」
「!?」
突如暗闇のどこかから俺以外の声が聞こえた。体を動かして声の主を探ってみるが、どこにも姿はなかった。
「誰だお前!」
「ギヒッ! どうやら元気みたいだな、塩崎空くん?」
「な、なんで俺の名前を!?」
「名前だけじゃないさ。塩崎空。国立大学に通う3年生で年齢は21。両親と妹の4人家族で、彼女もいたよな?」
声は俺のことなんかお見通しと言わんばかりに次々と俺の情報を口にした。個人情報漏洩も甚だしい。
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