70人が本棚に入れています
本棚に追加
「はぁ……はぁ……」
「ギヒッ! これで完了だ」
どす黒い渦が俺の周りから消える。視界には再び気色悪い姿をした悪魔が現れた。
体が重い。そして熱い。風邪をひいたときみたいに体が動かない。
この悪魔……何しやがった?
「お前がこれから行くエスティオンについての知識を脳に直接入れた。まぁ理解するのはあっちに行ってからだな。それと、悪魔の力の他にもう1つプレゼントがあるからな。ギヒッ! 楽しみにしてな」
「な、なんだよそれ……」
「ギヒッ! さぁな。さて、契約の代償だ。お前の中から1つ貰うぞ」
そう言うと悪魔は俺の頭に手をかざした。瞬間、頭にキーンと音が響いた。
痛みはないが、まるで頭の中を直接手で弄られているような感覚。気持ち悪い。今にも吐きそうだ。
「ギヒッ! 完了だ。お前の中の1つを貰ったぞ」
「はぁ……ゲホッ……ひ、1つってなんだよ」
「秘密だ。そのうち気付くだろうからな。ギヒッ!」
人の気も知らずに面白そうに笑う悪魔。そろそろその笑い声にイライラしてきたぞ。
そんなことを思いながら乱れていた呼吸を整える。
「さて、やることは終わったし、早速お前にはエスティオンに行ってもらうとするか。分からないことがあったら念じろ。俺とお前は魂の契約を結んでいるからな、声が繋がるはずだ」
「あ、あぁ……それで、俺はどうやってその世界に行けばいいのだ?」
「ギヒッ! まぁ焦るな。これを見てみろ」
悪魔が両手を広げると空間の裂け目が生まれ、そこにはローブを被った人たちの行列ができていた。
最初のコメントを投稿しよう!